今月の詩 2020(令和2)年

                                        

今まで人生を過ごす中で、たくさんの詩に励まされました。

それぞれの詩にたくさんの思い出があります。


2020(令和2)年5月

 「竹のように」
          竹中 郁

のびろ のびろ

まっすぐ のびろ

こどもたちよ

竹のようにのびろ


風をうけて さらさらと鳴れよ

日をうけて きらきらと光れよ


雨をうけたら じっとしてろ

雪がつもれば 一そうこらえろ

石をなげつけられたら

かちんとひびけ


ぐんぐん 根を張れ

土の中で その手とその手を

がんじがらめに握りあえ

竹 竹 竹 竹のように


のびろ

五月のみどりよ もえあがれ


青葉若葉の新緑の季節がやってきました。

しかし、新型コロナの影響で学校が休みになり、新学期になったという感覚がありません。

入学式が中止になったり、始業式が中止になったり、たいへんなことが起きています。

ほんとうならば、桜の季節が過ぎて、この「竹のように」の詩にあるように、さわやかな5月の風に揺れながら、青葉若葉が目に痛いほどの輝きで目に飛び込んでくるはずなのに。

教員をやっている時には、この5月はとても好きな季節でした。

新しい学級の担任になり、4月のあわただしい時を過ごし、落ち着いて学級経営を始めたのが5月でした。

この新型コロナの蔓延で、先生方は学級づくりにどう取り組んでいったらよいのでしょうか。

今の学校の学級担任の人の苦労がとてもよくわかります。



2020(令和2)年4月

 「北の春」
          丸山 薫

どうだろう

この沢鳴りの音は

山々の雪をあつめて

ごうごうと谷にあふれて流れくだる

このすさまじい水音は

ゆるみかけた雪の下から

一つ一つ木の枝がはね起きる

それらは固い芽の珠をつけ

不適なむちのように

人の額を打つ

やがて 山すその林はうっすらと

緑いろに色づくだろう

その中に 早くも

こぶしの白い花もひらくだろう


朝早く 授業の始めに

一人の女の子が手を挙げた

ーーー先生 つばめがきました


北の国に住んだことがないので、ごうごうとした沢鳴りの音は聞いたことがありません。

また、雪が解けて一斉に流れるのは、たぶんすさまじい音なんだろうという想像しかできません。

雪の下から一つ一つの枝がはね起きるというのは、植物が春を迎えて喜んでいるように思えます。

学級担任をしていたときにこの詩を知ったのですが、最後の2行が自分への呼びかけに思えたので、この詩を自分の手帳に書いておきました。

女の子が「先生、つばめがきました」と手を挙げて知らせるのです。

自分の学級は、このように自由に発言できているのだろうか。

このように自由に発言できる学級にするには、どうしたらよいのだろう。

この詩を読むたびに、反省をしていました。

そして、はじめて校長になったときの小学校では、校長室の前に白い花がいっせいに咲きました。

残念ながら、こぶしではなくて、こぶしの仲間の白木蓮でした。

(正式には、もくれん科の中にこぶしがあるのだそうですが。)

でもその白木蓮の白い花を見たとき、再びこの丸山薫さんの「北の春」の詩を思い出しました。

校長になっても「女の子がつばめがきました」というような学校、そんな学校づくりをしていこうと決意しました。

なつかしい思い出は、いつもセピア色に輝いています。




2020(令和2)年3月

 「旅立ちの日に」

白い光の中に 山なみは萌えて

遥かな空の果てまでも 君は飛び立つ

限りなく青い空に 心ふるわせ

自由を駆ける鳥よ ふり返ることもせず

勇気に翼を込めて希望の風にのり

この広い大空に夢をたくして



この歌を初めて聞いたのは、教頭になった次の年の3月の卒業式です。

初めて聞いたときは、なんていい歌なのかなと思いました。

自分の学校の小学校の卒業生が通う中学校に、来賓として校長や教頭が出席しま

す。小学校の卒業生全員が一つの中学校に行く場合には、校長が行くことになり

ますが、卒業生が二つの中学校に別れる場合には、校長と教頭で手分けして出席

するのです。

そこで、翌年の中学校の卒業式に来賓として出席してこの歌にめぐり合ったわけ

です。

中学校の生徒が歌う声でしたが、高音が響いてとてもきれいに聞こえました。

あとで調べましたら、作詞したのは、埼玉県秩父市立影森中学校長の小嶋登氏、

作曲したのは音楽教諭の坂本浩美先生であることが分かりました。

私の家からは、秩父連山の武甲山がよく見えます。

たぶん秩父連山の山なみを見ながら、校長先生は詩を書いたのだと思います。

詩もとてもすてきな詩で、3月の中学校の卒業式が待ち遠しかった記憶がありま

した。



2020(令和2)年2月

 「支度」
        黒田三郎

何の匂いでしょう
これは

これは
春の匂い
真新しい着地の匂い
真新しいかわの匂い
新しいものの
新しい匂い
匂いのなかに
希望も
ゆめも
幸福も
うっとりと
うかんでくるようです

ごったがえす
人いきれのなかで

だけどちょっぴり
気がかりです
心の支度は
どうでしょう
もうできましたか


6年生の担任だったときに、光村図書の国語の教科書の最後にこの詩がのっていました。

とてもきれいな詩だと思い、子どもたちと一緒に大声で読んだ覚えがあります。

子どもたち全員がこの詩を暗記して、朝の会で教科書を見ないで読んだ記憶もあります。

卒業式を前に、新しい道に進む子どもたちに、心の準備をしっかりするように励ましました。

希望を持ち、ゆめを持ち、幸福になっていくようにと願って、子どもたちを卒業させました。

あれから四十年。

つらいことや哀しいことに負けないで、生き抜いていってくれることをひたすら願っています。

自分の人生も、最終盤になってきました。

もう一度この詩をしっかり読みたいと思います。





2020(令和2)年1月

 「星落秋風五丈原」

祁山悲秋の風更けて

陣雲暗し五丈原

零露の文は繁くして

草枯れ馬は肥ゆれども

蜀軍の旗光無く

鼓角の音も今しずか

丞相病あつかりき



高校に入学した当時、吉川英治全集が発売になりました。

少ない小遣いをはたいて買ったのが「三国志」でした。

講談社版だったと思いますが、もしかすると平凡社版だったかもしれません。

中学時代は陸上部に入っていて、読書などまったくしていませんでした。

夏休みの宿題で読書感想文を書くために、中学校の図書室から「アンクルトムの

小屋」という本を借りて読んだのが、唯一の読書でした。

ですから、この吉川三国志が私の読書人生の出発点となりました。

そしてまもなく知ったのが、この土井晩翠の「星落秋風五丈原」の詩でした。

ものすごく長い詩で、全編読むと、諸葛孔明の心情がよくわかります。

土井晩翠の最高傑作です。

星落秋風五丈原」の曲(メロディ)も知ったので、高校時代には大声で歌って

いました。

土井晩翠が作詞し、滝廉太郎が作曲した「荒城の月」も有名です。

吉川英治の全集では「宮本武蔵」や「新・平家物語」も読みました。

でも、「三国志」がいちばんでした。

「三国志」の影響は、その後もずっと続きます。

ファミコンやスパーファミコンの「三国志」も買って楽しみました。

KOEIのシュミレーションゲームにも、どっぷりはまりました。

「三国志U」(1989年)から「三国志13」(2016年)までで、いまだ

に楽しんでいます。